社外取締役座談会

2022年〜2025年度中期事業計画KAYAKU Vision 2025(KV25の初年度を終えて、日本化薬グループのコーポレート・ガバナンスの現状やKV25 初年度の振り返り、これからの建設的な対話のあり方について、3人の取締役が意見を交わしました。

社外取締役 太田 洋

社外取締役
太田 洋

西村あさひ法律事務所・
外国法共同事業パートナー
株式会社リコー 社外監査役

社外取締役 藤島 安之

社外取締役
藤島 安之

一般社団法人外国人材支援機構
理事長

社外取締役 房村 精一

社外取締役
房村 精一

株式会社コンコルディア・
フィナンシャルグループ 社外監査役

日本化薬グループのコーポレート・ガバナンスの進歩

司会

 本日はどうぞよろしくお願いいたします。はじめに日本化薬グループのコーポレート・ガバナンスについて、実効性の評価を通じて達成した事項等をお伺いします。

藤島

 思い返すと、代表取締役の涌元社長が委員長を務め、社外取締役3名が参加する指名・報酬諮問委員会の設置(2020年6月)から当社のコーポレート・ガバナンス改革が加速しました。

房村

 指名・報酬諮問委員会では委員長から審議案件の背景を含めて、大変丁寧な説明がなされていました。社内の情報を社外役員に基本から説明してくださることによって理解が深まり、私たち社外取締役からも客観的な意見を出しやすく活発な議論が進み、速やかな取締役会への答申にもつながりました。

藤島

 当初考えていたよりも相当速いスピードでガバナンス体制の整備が進んだと感じています。2021年の役員報酬制度の見直しの際も、算定の仕組みを委員長から詳細に説明いただきながら議論を進め、スムーズに譲渡制限付株式報酬の導入に至りました。今後も、指名・報酬諮問委員会の使命を最大限に果たせるように運営いただければと思います。

太田

 当社グループは伝統的に、守りのガバナンスはしっかりしている一方、トレンドを積極的に取り入れる攻めのガバナンスは比較的慎重な印象でした。しかしここ数年はガバナンス改革が進み、2023年6月には初の女性取締役も誕生しました。
 また改訂コーポレートガバナンス・コードに対応するため、気候変動に関わる情報や、知的財産や人材に関わる情報の公表も進みました。変化の速い社会的要請に対し、社内の議論を深める基盤は整ったと思いますので、今後は「生物多様性」や「ビジネスと人権」などについても、取り組む内容をいち早く公表できるようになれば、なお好ましいと感じています。

人材の活用について

司会

 本書のコンテンツとしても注力した「人材の活用」について、ご意見をお願いします。

房村

 女性取締役の就任によって取締役会の多様性は向上し、当社の女性管理職比率も2024年の10%以上という目標に向かって少しずつ上昇しています。継続的な女性活躍の推進のために、働く意欲の高い女性をサポートする仕組みの充実や、中堅女性人材の教育プログラムなど、育成と働きやすさの両面から手厚い取り組みを期待したいと思います。

藤島

 国内では現在人口減少が進み、労働力の不足が益々深刻化する見込みです。海外からの労働力の重要性が増すことに対して、これまで国内企業は技能実習生等で外国人を受け入れていました。今後はそれだけに止まらず、経営幹部や技術リーダー等重要なポジションに積極的に外国人を登用する時代が来ると考えています。グローバルに展開する当社グループも、どのような仕組みで受け入れていくか等を早めに検討できれば良いと思います。
 また、人材活用という点では、育成だけではなく採用という方法もあります。新しい体制に必要な人材を外部から迅速に採用するといったことも場合によっては有効です。M&Aで組織ごと取得するなどさまざまな方法が考えられます。長期的なビジョンに向けて人材活用も、合理的にスピード感を持って取り組んでいただければと思います。

藤島取締役

司会

 当社の働き方や、多様性の推進に参考になるご意見をありがとうございます。

中期事業計画KAYAKU Vision 2025(KV25初年度を終えて

司会

 次に、初年度を終えた中期事業計画KV25 について、進捗のご感想や今後のご助言をお願いします。

房村

 計画立案当初から、グローバル経済や半導体・自動車の市況に大きな変化がありました。2022年度は堅調だったものの2023年度は利益面に大きな影響を受ける見込みです。今まさにこの現状を鑑み、新事業・新製品創出の加速が必要であり、このために、2023年6月には事業セグメントの再編成と、事業本部長制から管掌役員制への変更がありました。

藤島

 この変更によって、事業領域内でのシナジー創出がより一層期待されます。また、研究・開発と生産技術を司るテクノロジー統括が事業領域と同格に設置され、全社の能力を結集して新事業・新製品の創生に取り組む体制も明確になりました。この新しい体制によってKV25 の最終年度の目標達成に向けて行動計画を具体化することになります。

太田

 2007年のセイフティシステムズ事業本部立ち上げ以来、久しぶりの全社改革となります。これまでは基盤技術をニーズに応じて変化させながら製品を提供していましたが、今後は新製品・新事業のために新しい領域を切り開くことも必要です。そのような取り組みを機敏に実行できる体制になったと考えています。

積極的な成長投資・挑戦できる企業風土を

司会

 2023年度以降はどのような行動が必要になりますでしょうか?

房村

 やはり、利益改善に寄与する新事業・新製品創生の加速のため、積極的な投資は必要です。ある程度のリスクを考慮することになりますので、これを正しく認識することも重要です。

太田

 ファインケミカルズ事業領域の半導体関連材料等は機関投資家からも注目される分野であるので、思い切った投資判断によるトライ&エラーがあっても良いと感じます。そのためには失敗を恐れず挑戦できる風土の醸成も大事かもしれません。

藤島

 「石橋を叩いて渡らない」と自称した当社の経営の印象は変わってきています。かつては成長投資の必要性を助言申し上げていた時代もありましたが、現在は経営トップ自ら積極的な投資を促して、各事業の成長領域における増産投資や、まとまった規模の研究開発投資等が実施され始めています。

房村

 大きなリターンを目指すためとはいえ「リスクを受け入れる」ことに、会社としても、従業員一人ひとりにも抵抗感はどうしても生まれるものです。精神論だけではなく、リスクを受け入れる仕組みもあるといいですね。また、「リスクを受け入れる」「失敗を許容する」余裕を持つことは、現場の虚偽・隠蔽に起因する企業不祥事の抑制につながることも忘れてはなりません。努力の上であればどのような結果であれ、前向きに活かしていくという会社の姿勢を示すことが重要です。

房村取締役

藤島

 私も商社時代には多くのリスクテイクを実行しましたが、会社がリスクマネーとして許容する範囲で思い切ったチャレンジもできました。事業運営の資金とは別にリスクマネーを使う仕組みを整え、開発や投資に携わる従業員がこれを明確に認識することで、一人ひとりが新事業・新製品の創生に積極的に取り組むことのできる、より良い環境になるのではないかと思います。

司会

 挑戦できる風土の醸成について、社内への情報発信などに大いに参考になるご意見をありがとうございます。

グローバルに投資を呼び込むIRを

司会

 最後に、株主・投資家等ステークホルダーとの対話についてご意見をお願いします。

太田

 2021年度からは株主・投資家との対話に社外取締役も関与しており、建設的な対話に私たちも協力していけると思います。グローバル企業として資本市場から理解されるために、今後は海外の投資家向けの情報発信に力を入れてはいかがでしょうか。当社グループの「世界的すきま発想。」として表現されるニッチな製品群は、海外のバリュー・グロース投資家の興味の対象としても有望なものであると感じます。

藤島

 私が20年ほど前に社外取締役を務めた会社も、ニッチな事業を強みにコンパクトな規模から出発して、毎年トップ自ら海外のファンドに赴いて投資を呼び込み、その分野で世界一の企業になるまでに成長しました。海外投資家へ自社の魅力をできるだけ伝えていくという努力は、企業として定期的に実践されても良いかと思います。

太田

 その通りですね。また実務的には、英文による公表情報のさらなる充実や、PBR改善策の開示・実行の要請に応えていくこと、投資家と価値観を共有した合理的な資本政策を示すこと等も重要ですね。新事業・新製品の創出と合わせて、株主・投資家からより興味を持たれるような価値創造ストーリーの公表を期待します。

太田取締役

司会

 経営や情報公表の参考になるご意見を多数賜り、大変勉強になりました。本日はお集まりいただき、誠にありがとうございました。

新任社外取締役就任メッセージ

 はじめまして。このたび、社外取締役に就任いたしました赤松育子と申します。本職は公認会計士・公認不正検査士です。監査法人勤務の後、大学での研究・コンサルティング活動(10年間)を経て、現在は日本公認会計士協会理事として、自らも社外役員を務めながら、社外役員たる公認会計士の資質向上に取り組んでいます。
 社外役員の使命は、組織に多様性をもたらすことです。人は本能的に同質性を求めますが、特に取締役会という会社の意思決定機関において多様性を追求することは、意思決定の精度を上げ、組織のリスク感応度を高めていきます。自らの関与した意思決定が、会社の将来に重大な影響を及ぼす訳ですから、その責任の重さに身が引き締まる思いです。
 働く女性のひとりとして、いわゆる「ママ会計士」のはしりとして、私はさまざまなマイノリティ体験をしてきました。マイノリティだからこそ見えている、つまりマジョリティには認知することのできない観点から、当社のお役にたてるようにと願っております。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

社外取締役
赤松 育子

公認会計士および社外役員としての豊富な経験を有しており、2023 年6 月に当社取締役に就任

会社情報

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