財務戦略

取締役・専務執行役員
経営企画部、コーポレート・コミュニケーション部、経理部、情報システム部管掌

石田 由次

 日本化薬グループは、2022年度からの4カ年中期事業計画KAYAKU Vision 2025KV25)において、強みである強靭な財務体質を一定水準で維持しつつ、経済的価値および気候変動対応等の環境・社会的価値の提供に努め、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
 2023年6月には、将来性あるマーケット領域を定めて「モビリティ&イメージング」※1「ファインケミカルズ」※2「ライフサイエンス」※3の3事業領域にセグメントを再編しました。この主要3事業領域の持続的な成長によりポートフォリオのバランスを維持しながら、事業領域内のシナジーを発揮するとともに成長分野への積極的な投資を行い、KV25の経営目標達成とその後の中長期的な成長を目指します。
 また、最適資本構成を意識したバランスシート経営にて経営資源を適正に管理し、市場環境の変化や事業等のリスクに柔軟に対応できるように、引き続き強固な財務基盤を構築していきます。

  • ※1 セイフティシステムズ事業(自動車安全部品)、ポラテクノ事業(車載用光学フィルムなど)
  • ※2 機能性材料事業、色素材料事業、触媒事業
  • ※3 医薬事業、アグロ事業

企業価値の向上に向けた経営資源の適正管理

 日本化薬グループは、キャッシュ・フロー経営を重視し、バランスシートマネジメントに努めています。全社経営目標として設定したKPIであるROEは、当社グループが存在感を持った企業であるための最低条件として、8%を確保すべき水準と考えています。
 KV25 の初年度となる2022 年度末のROEは、事業環境変化に伴う減益によって6.0%となり、自己資本比率も78.7%と僅かに上昇しました。KV25 の期間中は、各製品の伸長とともに原料高騰への対処、ならびにコストダウンに努めて利益確保を目指し、運転資本である営業債権・棚卸資産について、サイトの短縮や適正管理に努めます。また、政策保有株式については毎年検証を行い、継続して保有する必要がないと判断したものは、市場への影響を考慮しつつ売却していきます。そのほか、主に工場跡地等の遊休資産圧縮の適切な時期を検討するなどの取り組みを加えながら、適正な現金同等物を保有した経営を推進し、株主還元と合わせ総合的にあるべきROEの追求を継続してまいります。

資産推移

キャッシュ・フロー推移

持続的な成長のための財務戦略

 KV25の4年間は、将来への投資として研究開発費・設備投資額を大幅に増加させる計画です。設備投資については需要増の予測・損益・投資効率等を勘案し、主なものでは機能化学品事業においては産業用インクジェットインクの製造設備※1 や、エポキシ樹脂製造設備※2 の増設計画が具体化しています。セイフティシステムズ事業においてはASEAN・中国市場向けを中心にインフレータ・スクイブ製造設備※3 の増設を予定しています。

  • 第166期有価証券報告書より
  • ※1 福山工場(広島県福山市):約43億円
  • ※2 厚狭工場(山口県山陽小野田市):約66億円
  • ※3 化薬(湖州)安全器材有限公司:約6億円、カヤク セイフティシステムズ デ メキシコ, S.A. de C.V.:約7億円、カヤクセイフティシステムズマレーシアSdn.Bhd.:合計 約48億円

 信用格付けの客観的評価としてはR&I(株式会社格付投資情報センター)の評価結果「格付A」を維持し、資本コストを勘案しながら社債や借入を活用して資金を確保していきます。KV25 期間中には、自己資本比率70%までを目安に借入金も活用し、成長投資および株主還元に充当します。キャッシュ・アロケーションにおいては、研究開発費、設備投資のほか、製品導入やM&A等の戦略的な投融資のための機動的アロケーションを含めて合計2,000 億円を上限としながらも、積極的に将来に向けた投資を進めてまいります。

株主還元について

 当社は、株主の皆様への利益還元を重視しています。また、2022 ~ 2025年度の中期事業計画KV25 においては、配当性向40%以上を目標とします。内部留保を十分確保しながら、利益還元の一環として自己株式取得を機動的に実施します。内部留保は、将来の発展のために成長する事業への研究開発投資や設備投資、製品導入やM&A等の戦略的投融資へ充当し、企業価値を高めてまいります。
 2022年度は、9月30日を基準日として1株当たり20円の中間配当を実施し、期末配当金の1株当たり25円と合わせて年間配当金は1株当たり45円となり、配当性向は50.4%でした。また、2022年5月から9月にかけて実施した約30億円分の自己株式の取得の結果、2022年度の総還元性向は70.4% となりました。

目標配当性向:40%以上

株主・投資家情報

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