人権は、すべての人の幸福と豊かな生活を追求するうえで不可欠であり、基本的人権は最優先で守られるべきと考えます。
私たち日本化薬グループは、事業活動をグローバルに展開する中で、国際的な人権規範に基づき人権を尊重することはサステナブル経営の基盤であると考え、「日本化薬グループ行動憲章・行動基準」、「日本化薬グループ人権方針」において人権の尊重を明文化し、取り組みを推進してまいりました。
2024年2月には、2022年に制定した「日本化薬グループ人権方針」を再考し、取締役会の決議を経て改定しました。今回の改定においては、適切な労働時間や公正で公平な報酬などの項目を追加しました。国際的に「人権」が大きな社会課題として注目され、人権尊重の重要性が高まる中で、企業活動全体において人権を取り巻く環境の変化に対応し、人権尊重の取り組みを一層強化すべく、本方針を改定しました。
また、2023年度は社内アンケート調査を実施し、日本化薬グループの従業員にとって顕在的・潜在的にどのような人権リスクが懸念されるのか、優先的に人権への負の影響の防止に取り組むべきテーマを特定しました。ステークホルダーの意見を反映しながら対策を強化していくとともに、人権リスク評価および優先対策リスクについて定期的に見直す予定です。
今後も国連グローバル・コンパクトの署名企業として、「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持するなど、日本化薬グループの事業活動に関わるすべての人々に対する人権尊重の取り組みを推進します。
取締役常務執行役員
武田 真
日本化薬グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を擁護することを責務として認識しています。
そのため、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進することを目的として、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく、日本化薬グループ人権方針(以下、本方針)をここに定めます。
日本化薬グループはステークホルダーの期待に応え、事業を通じて社会へ貢献することを企業ビジョンKAYAKU spiritの中で掲げています。また、KAYAKU spiritを実現するための行動規範として、「日本化薬グループ行動憲章・行動基準」を定め、あらゆる企業活動において、基本的人権を尊重し法令を遵守し、公正な事業活動を行い、すべてのステークホルダーの信頼に応え、幸せやうれしさを提供できる会社を目指していきます。
本方針は、日本化薬グループが企業ビジョンKAYAKU spiritに基づき、すべてのステークホルダーの信頼に応えるため、人権尊重の取り組みを約束するものです。私たちは国連の「国際人権章典」(「世界人権宣言」「市民的および政治的権利に関する国際規約」「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」)「先住民族の権利に関する国際連合宣言」や、「OECD多国籍企業行動指針」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」および、国連児童基金(UNICEF)、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンの「子どもの権利とビジネス原則」などの人権に関わる国際規範を支持し尊重します。さらに、国連グローバル・コンパクト署名企業として国連グローバル・コンパクトの10原則を支持し尊重しています。
日本化薬グループは、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がい・出身・祖先・信条・政治的見解・性的指向・婚姻の有無・雇用形態その他の差異に基づく差別およびハラスメント行為を容認しません。
日本化薬グループは、適用される法令に従い、従業員の労働時間、休日、休暇を適切に管理します。
日本化薬グループは、従業員に対して公正で公平な報酬を支払います。また、最低賃金、残業、および法的に義務づけられている福利厚生に関する法律など、適用される法令を遵守し、従業員が生活水準を一定以上に保てるよう、最低賃金を超える報酬を支払います。
日本化薬グループは、各国・地域の法令や労働慣行を踏まえ、労使関係における従業員の結社の自由および団体交渉権を尊重します。
日本化薬グループは、強制労働を容認しません。また、債務労働や人身取引を含む、いかなる形態の現代奴隷も容認しません。
日本化薬グループは、児童労働を容認せず、法に定められた最低就業年齢を守ります。また、18歳未満の者を夜勤や残業など、健康や安全が損なわれる可能性のある危険業務に従事させません。
日本化薬グループは、適用される法令に従い、一人ひとりが健康かつ安全に、そして安心して働き続けられる職場環境を整備します。
日本化薬グループは、地域住民の安全や健康への負の影響防止のため、汚染の予防、水ストレスをはじめ、人権についての影響評価を行い、リスクの回避及び影響の軽減に向け国際規範に則り、必要な対応を実行します。
本方針は、日本化薬グループのすべての役員と従業員に適用します。加えて、日本化薬グループは、自社の事業活動・製品・サービスに関係するすべての取引関係者(ビジネスパートナー)に対しても、本方針の遵守を求めます。
日本化薬グループは、自らの事業活動において人権への負の影響を及ぼす可能性を完全には排除できないことを認識しています。私たちは、自らの事業活動において影響を受ける人々の人権を侵害しないこと、また自らの事業活動において人権への負の影響が生じた場合は是正に向けて適切な対応をとることにより、人権尊重の責任を果たし、責任あるサプライチェーンを築いていきます。
日本化薬グループは、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、日本化薬グループが社会に与える人権に対する負の影響を特定し、その未然防止および軽減を図ります。
日本化薬グループは、自らの事業活動において人権への影響に適切に対応していくために、自らの事業活動において人権への影響を受けるあるいは受ける可能性があるステークホルダーの視点から理解することが重要であると考えています。本方針を実行する過程において、独立した外部からの人権に関する専門知識を活用し、ステークホルダーとの対話と協議を真摯に行います。
日本化薬グループは、本方針がすべての事業活動に組み込まれ、効果的に実行されるよう、適切な教育・研修を行います。
日本化薬グループの事業活動が、人権に対する負の影響を引き起こしたことが認められる場合、あるいは取引関係者等を通じた関与が明らかとなった、または関与が疑われる場合には、適切な調査を行ったうえで、必要に応じて国際基準に基づいた対話と適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
日本化薬グループは、本方針の実行に責任を持つ担当役員を明確にし、実施状況を監督します。
日本化薬グループは、自らの人権尊重の取り組みの進捗状況およびその結果を、ウェブサイトなどで開示します。
日本化薬グループは、事業活動を行うそれぞれの国または地域における法と規制を遵守します。国際的に認められた人権と各国の法令に矛盾がある場合には、国際的な人権原則を最大限に尊重するための方法を追求します。
本方針は、当社の取締役会にて決議し、代表取締役社長により署名されています。
制定 2022年4月1日
改定 2024年2月27日
日本化薬株式会社
代表取締役社長
日本化薬グループは、グループ全体で人権尊重やコンプライアンスを徹底するためサステナブル経営会議の専門委員会として「倫理委員会」を設置し、年2回(必要があれば随時)開催しています。倫理委員会は、社長の指名を受けた役付執行役員を委員長とし、各事業領域企画部および事業領域に属さない一般管理部門の各部の代表者から構成される委員会で「日本化薬グループ行動憲章・行動基準」の遵守に関する方針・具体策を決定するとともに、相談事案・発生事案の対応と再発防止策を検討・決定しています。倫理委員会で議論された内容のうち、重要な事項はサステナブル経営会議および取締役会に報告されフィードバックを受けています。
人権デュー・ディリジェンスは、日本化薬グループ人権方針のもと、責任者を倫理委員会委員長、経営企画部サステナビリティ推進担当を事務局として、関連部署と連携し構築を進めています。自社従業員に関する人権リスクの場合は人事部、調達先に関する人権リスクの場合は調達部と各工場・各事業所の調達部門が各々リソースを確保して対応にあたります。人権に関する審議事項はサステナブル経営会議の承認を経て、取締役会に付議・報告しています。
サステナビリティ 重要課題 |
目指す SDGs |
アクションプラン | 重要指標(KPI) | 2025年度 到達目標 |
実績 | 2023年度 取り組みに関するトピックス |
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2022年度 | 2023年度 | ||||||
雇用の維持・拡大と人材育成、人権尊重 |
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人権に関する研修回数 | 1回以上/年 | 1回 | 2回 |
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人権デュー・ディリジェンス 「人権への影響評価」実施率 |
(単)2022年度までに実施 (連)2025年度までに100% |
(単)未完了 | 日本化薬グループ従業員を対象に人権リスク評価および優先対策リスクを特定 |
日本化薬グループは、日本化薬グループ人権方針に則り、人権尊重をサステナビリティ重要課題の1つとしてアクションプランを策定しています。毎年進捗状況を管理・開示することで、日本化薬グループ全体で人権デュー・ディリジェンスのプロセスを構築し活動を推進します。2021年度から1次および2次サプライヤーを対象に、人権への影響評価の調査を実施しています。2022年度は、ビジネスと人権の理解を目的として全役員および関連部署所属長を対象に勉強会を2回開催しました。2023年度は社内アンケートにより、日本化薬グループの従業員にとって顕在的・潜在的にどのような人権リスクが懸念されるのか、優先的に人権への負の影響の防止に取り組むべきテーマを特定しました。今後もステークホルダーの意見を反映しながら対策を強化していくとともに、人権リスク評価および優先対策リスクについて定期的に見直す予定です。
法務省人権擁護局の「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書を基に、苦情処理委員を対象とした社内アンケートを実施しました。苦情処理委員は会社側委員と組合側委員の双方が参画しています。社内アンケートにより、日本化薬グループの従業員にとって顕在的・潜在的にどのような人権リスクが懸念されるのか、「発生可能性」と「深刻度」それぞれを1~5の5段階(数字が高い程リスクが高い)で評価しました。評価結果をもとに人権デュー・ディリジェンスの事務局である経営企画部サステナビリティ推進担当が人権リスクマップを作成し、発生可能性・深刻度ともに中程度以下の人権リスクを確認しました。その中で、日本化薬グループの優先対策リスクとして、①パワーハラスメント、②過重労働・長時間労働、③プライバシーの権利の3つをサステナブル経営会議の審議を経て、特定しました。
賃金の不足・未払、生活賃金、過重労働・長時間労働、労働安全衛生、社会保障を受ける権利、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント/パタニティハラスメント、介護ハラスメント、強制的な労働、居住移転の自由、結社の自由、外国人労働者の権利、児童労働、テクノロジー・AIに関する人権問題、プライバシーの権利、採用における差別、雇用条件・待遇における差別、機会・評価における差別、ジェンダー(性的マイノリティを含む)に関する人権問題、表現の自由、知的財産権、賄賂・腐敗、救済へアクセスする権利
人権リスクの影響評価により特定した日本化薬グループの従業員にとっての優先対策リスクに対して、人権への負の影響を防止、軽減、是正するために以下を実行しています。
日本化薬グループの従業員における優先対策リスク | 負の影響の防止、軽減、是正策 |
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パワーハラスメント | |
過重労働・長時間労働 | |
プライバシーの権利 |
日本化薬グループ(国内)では、毎年10月を「コンプライアンス推進月間」としコンプライアンス意識調査を実施しています。コンプライアンス意識調査は、2015年度よりコンサルタント会社と契約し実施しています。コンプライアンス意識調査の集計結果や分析結果については、コンプライアンス推進に関する各職場の課題を抽出したうえで、改善提案を含めそれぞれの職場へフィードバックしています。各職場は、これらを参照して次年度のコンプライアンスアクションプランを策定し、意識向上のためにPDCAを回しています。2023年度コンプライアンス意識調査の結果、人権に関する深刻な事案はありませんでした。
日本化薬グループは、日本化薬グループ人権方針において、強制労働や債務労働、人身取引を含む、いかなる形態の現代奴隷を容認しないことを明記しています。人材の採用にあたっては、必ず応募者からの申し込みを前提としており、1回以上の採用選考を経て合格を通知しています。また入社いただく際には労働条件を提示し、応募者の合意のもと、雇用を開始しています。
グローバルに事業活動を行う日本化薬グループは、さまざま国籍・宗教・文化を有する従業員によって構成されています。グループ全体での会議や教育研修などを目的に海外から従業員が来日する際には、要望などを確認し、礼拝室の設置や宗教に配慮した食事の準備など対応しています。
セイフティ本社工場(姫路)にはイスラム文化をもつ従業員が技術習得の研修のために来日することもあります。セイフティ本社工場(姫路)では礼拝室とお祈り前に水で身を清めるためのスペースを設置しており、食堂ではハラール対応メニューも提供しています。
日本化薬グループは、日本化薬グループ人権方針において、児童労働を容認せず、法に定められた最低就業年齢を守ることを明記しています。従業員の採用の際には、当該国の法令を遵守し、人材紹介会社やお取引先にも同様の対応を求めています。また、18歳未満の者を夜勤や残業など、健康や安全が損なわれる可能性のある危険業務に従事させません。
日本化薬グループでは、サプライチェーン全体で人権尊重の取り組みを促進するため「日本化薬グループ行動憲章・行動基準」「購買理念」「購買基本方針」「責任ある鉱物調達に関する方針」に基づき「サステナブル調達ガイドライン」を定め、お取引先に周知しています。また「サステナブル調達ガイドライン」に沿った内容のサステナブル調達アンケートを実施しています。2023年度までに回収したアンケートでは、お取引先に改善要望依頼書を発行するような重大な人権問題は確認されませんでした。今後もお取引先とともにサステナブル調達の推進に取り組んでいきます。
日本化薬グループでは、事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重することの重要性についてすべての役員・従業員(契約社員、パート社員含む)および派遣社員と認識を共有するために年に1回、人権に関する研修を実施しています。人権方針、ハラスメント防止、法改正、コンプライアンス意識調査の結果なども参考にして研修内容を決定しています。
2022年度の研修では、日本化薬グループ人権方針制定にあたり、人権方針制定の背景、人権方針各項目の解説、人権デュー・ディリジェンスのプロセスなどについてeラーニングで研修を実施しました。
また、中期事業計画KAYAKU Vision 2025 のスタートに合わせ、日本化薬グループ人権方針の解説も含めた冊子を作成し、製造拠点がある国の言語に翻訳し6か国語(日本語・英語・中国語・スペイン語・マレー語・チェコ語)で日本化薬グループ全役員・全従業員に配付し周知を図っています。
研修名 | 主な内容 | 主な対象 | 年度 | 受講形式 | 実施回数 | 平均受講率 |
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役員、従業員(契約社員、パート社員含む)、派遣社員 | 2023 | eラーニング | 2回 | 86% |
日本化薬グループは2022年から、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのヒューマンライツ・デュー・ディリジェンス分科会と人権教育分科会に参画しています。有識者の講演から人権に関する知識を深め、テーマ・業界ごとのグループワークなどを通じて他社と情報交換を行い、自社の人権尊重の取り組みの推進に活用しています。
日本化薬グループでは、人権課題への対応を含む法令違反・倫理違反などの行為を早期に発見し、未然防止を図り、経営の透明性・公正性を高めることを目的に「コンプライアンス・ホットライン」と「お取引先からのコンプライアンス・ホットライン」を設置しています。
「コンプライアンス・ホットライン」は、国内の日本化薬グループ全役員・全従業員・退職者(退職後1年以内)を対象としています。通報・相談窓口は、倫理委員会事務局(内部統制推進部コンプライアンス担当)または社外法律事務所から選択することができます。
「お取引先からのコンプライアンス・ホットライン」は、国内の日本化薬グループと業務上の取引をしているお取引先の全役員・全従業員の方を対象としています。通報・相談窓口は、倫理委員会事務局(内部統制推進部コンプライアンス担当)です。
両窓口ともに機密性・匿名性が担保された制度となっており、通報・相談したことによる不利益を受けることはありません。