日本化薬グループは、高品質で安全・安心な製品を社会に提供するために、企業ビジョンであるKAYAKU spiritに基づき「環境・健康・安全と品質に関する宣言」を基本方針として制定し、品質保証体制を構築しています。これにより品質マネジメントシステムを適切に運用し、サステナビリティ重要課題で設定した指標を含めた品質ガバナンスの徹底に取り組んでいます。さらに、すべての製品の企画・開発・生産から廃棄・再資源化に至るライフサイクル全体および資源・エネルギー・情報などに対する責任も重要な要素と認識しており、従業員の品質意識向上にも注力しています。
日本化薬グループは、取締役会の直接監督のもと社長執行役員を議長とするサステナブル経営会議の専門委員会として「環境・安全・品質経営推進委員会」を設置し、品質マネジメントを統括しています。
各事業部の品質保証責任者および本社間接部門により構成される本委員会において、品質保証方針の策定や品質活動状況の課題と対策について討議し、サステナブル経営会議へ審議・報告することにより、グループ全体の品質保証体制の強化に取り組んでいます。
日本化薬グループは「モビリティ&イメージング事業領域」「ファインケミカルズ事業領域」「ライフサイエンス事業領域」で事業を展開しています。さまざまな事業形態において適切な品質マネジメントシステムを構築し、高品質な製品・サービスを開発・提供するために、品質保証に関する国際規格の認証を各事業で取得しています。
モビリティ&イメージング事業領域では、セイフティシステムズ事業部、セイフティ本社工場(姫路)、開発統括部にて、IATF(国際自動車産業特別委員会)が策定した自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格のIATF16949の認証を取得しています。自動車安全部品を製造している海外グループ会社も同様にIATF16949を取得し、より高品質な製品の提供に取り組んでいます。
ファインケミカルズ事業領域では、福山工場、厚狭工場、東京工場、本社・研究所の品質マネジメントシステムの一体運営を2020年10月に開始し、2021年7月にはISO9001の統合認証を取得しています。
ライフサイエンス事業領域の医薬事業部では、高崎工場、医薬研究所にてISO9001および医療機器・体外診断用医薬品の品質マネジメントシステム規格であるISO13485の統合認証を取得しています。さらにグループ会社である日本化薬フードテクノにおいて、2022年10月に食品安全マネジメントシステムに関する規格であるISO22000を取得しました。アグロ事業部では鹿島工場、アグロ研究所で品質マネジメントシステムの一体運営を2021年3月に開始し、2021年8月にはISO9001の統合認証を取得しています。
日本化薬グループでは、事業特性に合わせ適切な品質ガバナンスを機能させるため、各事業領域に設置した品質部門が担当する事業場に対して品質監査等を実施しております。さらに各事業領域の品質部門に対しては、RC・技術統括部生産技術担当TQM推進グループが定期的に中央品質診断※を実施し、品質保証レベルを向上するための提案や品質マネジメントシステムが効果的かつ効率的に機能していることを確認しています。
こちらの表は横にスクロールできます。
サステナビリティ 重要課題 |
目指す SDGs |
アクションプラン | 重要指標(KPI) | 2025年度 到達目標 |
実績 | 2024年度 取り組みに関するトピックス |
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2023年度 | 2024年度 | ||||||
品質と顧客の安全 |
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重大顧客苦情件数※ | 0件 | 0件 | 0件 |
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重大工程異常件数※ | 0件 | 0件 | 1件 |
日本化薬グループでは、RC・技術統括部生産技術担当TQM推進グループが各領域の品質部門を支援しながら品質保証・品質向上活動を推進しています。安定した品質を保証するため品質管理技術力の強化に努め、顧客苦情の低減および品質工程異常の低減を目的として、中央品質診断、品質教育・研修、品質改善活動に取り組んでいます。
日本化薬では1948年に工場技術者がQC活動として自主的に統計手法の検討を始め、その後も活発な活動を継続することによって、1963年にはデミング賞を受賞することができました。この品質向上の精神は現在も受け継がれており「A3活動(KAIZEN)発表大会」として国内だけでなく、海外グループ会社においても現場の技術者が中心となった品質改善活動に取り組み、さまざまな成果をあげています。さらに、デミング賞受賞時の社内品質教育テキスト「みんなの品質管理」は現代版にブラッシュアップし、教育研修資料として活用しています。
日本化薬グループは、品質工程異常や顧客苦情の原因を探索し、効果的な再発防止を行うために、個々人ではなく職場全員が一体となって考え、適切な対策を立案していくことを目的に「なぜなぜ分析」という手法を取り入れています。2014年には「なぜなぜ分析」をより積極的に活用するために、各工場から推進チームを結成して「なぜなぜ分析マニュアル」を作成し、各職場への普及を進めています。現在では改版を重ね、さらに海外グループ会社へも展開できるように外国語版も作成して講習を行うなど、国内外の職場において改善活動の活性化に役立てています。
日本化薬グループの各事業領域では、RC・技術統括部生産技術担当TQM推進グループが提供する教育プログラムだけでなく、それぞれの業種に合わせ、さまざまな品質保証活動を展開しています。
ファインケミカルズ事業領域では、品質の統括部門として品質保証部を設置し、国内外の製造拠点や事業部との連携により、お客様の期待に応えられる製品品質の確保に取り組んでいます。
福山工場と厚狭工場では、品質検査の信頼性を高めるためにLIMS(Laboratory Information Management System:ラボラトリー情報管理システム)を導入し、運用拡大を進めています。LIMSは品質検査業務を電子化することで人為的な介入を最小限に抑えるシステムで、データ転記のヒューマンエラーを防止し、検査が定められた手順通りに行われたことを保証するために有効です。また、製造工程における異常を未然に防止するために工程FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)等の品質リスクアセスメント手法も活用しています。
品質パトロールは、製造現場の品質管理を強化し、製品の品質を確保するために欠かせない活動です。潜在的な問題を発見し、適切な対策を講じるための重要な活動と位置付けて、各工場で取り組んでいます。
今後も各種活動を通じて、従業員が自発的に行動し責任感を持って業務に取り組み、品質文化の醸成を推進することで、すべての人々に信頼される製品を提供します。
お客様からいただく品質に関するご意見やご指摘は、私たち日本化薬グループにとって解決すべき問題であると同時に製品・サービスの品質向上につながる貴重な機会と捉えています。すべてのお客様からの品質情報は社内で共有し、迅速かつ的確に原因を調査し、是正措置を実施します。得られた知見は水平展開して再発防止に努めています。
万が一、重大な品質問題やお客様の安全に関わるインシデントが発生した場合には、危機管理規程に則り、危機管理委員会委員長の指示のもとで迅速に対応チームを立ち上げ、お客様への影響を最小限に抑えるため全力を尽くします。
お客様の安全と信頼を第一に考え、透明性の高い情報共有と誠実な対応を心掛けています。
RC・技術統括部生産技術担当TQM推進グループでは、品質保証・品質向上活動を行う上で必要となる課題を企業ビジョンであるKAYAKU spiritを中心に据えた「品質マンダラート」として集約することにより明確にし、これに沿った品質教育を計画的に実施しています。
「品質マンダラート」はさらに細分化され、表中A~Hの課題を解決し、あるべき姿を実現するために必要な知識やスキルが定義されています。これに従ったさまざまな品質教育は、各事業領域の研究・開発者および工場関係者が効率的かつ効果的に受講できるようにするために集合研修だけでなく、ウェブ会議システムを活用して受講者の移動を伴わない方式、講師を各事業場に派遣した上で複数事業所へ同時配信するハイブリッド方式で行うなどオンラインとオフラインを使い分け、研修方法も工夫しています。また、教育・研修後にはアンケート調査を実施し、受講内容の質・量についてさらなる改善につなげています。
日本化薬では、新入社員から管理職まで品質教育を継続的に実施しています。高品質な製品・サービス提供の実現に向けて、従業員一人ひとりが品質意識の向上のために日々研鑽を積んでいます。
研修名 | 内容 | 2024年受講者数 | 累計 |
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なぜなぜ分析研修 |
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47名(男性33名、女性14名) | 263名(2020年度~) |
ヒューマンエラー対策研修 |
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166名(男性144名、女性22名) | 910名(2020年度~) |
新入社員 品質研修 |
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58名(男性43名、女性15名) | 317名(2021年度~) |
品質月間講演会 | 品質不正防止に関するセミナー 「チームの成長を加速させる対話術 ~品質不正の心理的メカニズムを紐解く~品質コンプライアンスの本質を理解する」 |
143名(男性 92名、女性51名) | 303名(2023年度~) |
品質の高い製品を迅速に市場へ提供するためには、お取引先との信頼関係に基づく継続的な品質向上が欠かせません。
セイフティシステムズ事業では、新規お取引先を選定する段階で品質安全統括部が工程監査、品質状況の確認、品質向上のためのアドバイスなどの品質教育を実施しています。
また、日本化薬グループ品質マニュアルをすべてのお取引先へお送りし、内容承諾の受領書はすべてのお取引先から提出いただくようにしています。
調達品の種類・重要度に応じて、調達統括部がお取引先への定期監査を実施しています。定期監査では、日本化薬グループの品質保証の基本的な考え方や品質管理基準の確認、お取引先の品質状況の確認、品質向上のためのアドバイス等を行っています。
2024年度は主要お取引先25社に定期監査(実地監査21社、チェックシートを用いた書面監査4社)を実施しました。定期監査の結果、深刻な品質問題につながるような事例はありませんでした。指摘事項については「工程・製品監査改善計画書兼対策書」を提出いただき、是正されていることを確認しています。
品質の維持向上のためには、お取引先との関係強化が重要です。今後も定期的に困りごとの相談を含めた意見交換を通じて、お取引先とともに品質の維持・向上に向けて取り組みます。
お客様に高品質な製品・サービスをお届けするためには、お取引先と協力して定期的な調査と監査を通じて品質を保証し、継続的に品質向上活動を推進していくことが重要だと考えています。
日本化薬は、事業部ごとにお取引先の業界が異なるため、事業部ごとに日本化薬の品質保証の考え方、要望事項をまとめた品質マニュアルを作成し、すべてのお取引先に配付しています。
さらに、調達品の種類・重要度に応じて、調達、品質の関係部門が連携し、適切な頻度で調達取引先の監査を実施しています。監査において発見された問題点については、課題解決の対策実施と効果が確認できるまで、お取引先の活動のフォローをすることで調達品品質の確保を図っています。
アグロ事業部では、国内外の製造委託先の協力を得て、定期的な監査や綿密な情報交換を行うことにより、委託製品の品質維持・改善を進めています。監査は、品質保証部門と技術部門が連携し、必要に応じて研究部門も協働で実施しています。法規制の適合性、品質保証体制、品質管理・製造工程の状況等について調査票に基づいた事前のアンケートを実施し、自己評価が低い項目を事前に把握した上で、可能な限り現地にて確認しています。また、過去に当社および製造委託先で発生したヒヤリハットとその対策を、双方で共有することにより、同種の異常が発生しないように対応しています。製造委託先とも連携して、製品の品質、お客様満足度の向上に努めるとともに、食糧供給を支え、持続可能な農業の発展に貢献していきます。
医薬品情報センターでは、抗がん薬・自己免疫疾患治療薬・血管内塞栓材など当社の医療用医薬品・医療機器に関わるさまざまな問い合わせを患者さんや医療関係のみなさまから専用のフリーダイヤルでいただいています。2024年度の電話等によるお問合せ件数は17,924件でした。当社が提供するすべての製品が、お客様にとってより良い製品となることを目指して、センターのくすり相談員はお問い合わせ一つひとつに対して、迅速・正確・丁寧に回答することを心がけています。また、私たちの回答がお客様の期待にお応えしているかアンケートを行い日々改善に努めています。
医療施設を訪問する医薬情報担当者と連携し患者さんのお役に立てる情報を提供するよう努めるとともに、お客様からのご要望やご意見を社内の担当部署に報告・提案しています。医薬品情報センターでは「すべては適正使用の推進と顧客満足の向上のために」をスローガンとし、より良い医療に貢献していきます。
社外からのお問い合わせ件数の推移
お問い合わせ内容分類(2024年度)
日本化薬グループは、革新的で有用性の高い医薬品の開発と製薬産業の健全な発展を通じて、日本および世界の人々の健康と医療の向上に貢献するという趣旨に賛同し、日本製薬工業協会に参画しています。創薬型製薬企業としてコードコンプライアンス、流通適正化、プロモーション、臨床評価、PMS、品質、薬事、研究開発についてのビジョンの作成、推進を通じて、製薬産業の健全な発展に貢献します。