水リスクは大きく分けて、渇水、洪水、水質汚染の影響による物理的リスク、水質基準強化や上下水道料金の改定、工水の供給停止による上水への切り替えなどの規制リスクなどが挙げられます。また、水資源は限られた大切な資源であり、その保全は世界的な重要課題となっています。
日本化薬グループは世界12の国と地域でさまざまな製品を製造しており、中でも化学製品の製造では水資源は事業活動を営んでいくために必要不可欠です。当社グループの活動拠点の水資源の保全に留意し、水の使用で無駄がないよう取り組んでいます。
日本化薬グループは、水資源の利用に関するリスクを把握し、より効果的な水リスクへの対応につなげていくため、世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いて、日本化薬グループの工場が立地する地域の水ストレス状況に関する調査を実施しました。
水ストレスレベルが「高~中」と比較的高い化薬(湖州)安全器材では中央環境安全衛生診断を定期的に実施する計画をたて、水資源管理が適切に行われていることを確認しています。今後、水ストレスが高い地域に立地するすべての工場で水資源管理が適切に行われていることを確認し、将来的には削減計画の策定を進めます。
地域・国名 | 単位 | 水ストレスレベル別の水使用量 | |||||
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高 | 高~中 | 中 | 中~低 | 低 | |||
アジア | 日本 | 千m3(拠点数) | 0 | 1,600(2) | 17(3) | 8,891(5) | 0 |
中国 | 千m3(拠点数) | 18(1) | 477(3) | 0 | 0 | - | |
マレーシア | 千m3(拠点数) | 0 | 0 | 0 | 0 | 48(1) | |
欧州 | チェコ | 千m3(拠点数) | 0 | 20(1) | 0 | 0 | 0 |
オランダ | 千m3(拠点数) | 0 | 0 | 0 | 0 | 3(1) | |
イギリス | 千m3(拠点数) | 1(1) | 0 | 0 | 0 | 0 | |
北中米 | アメリカ | 千m3(拠点数) | 75(1) | 0 | 0 | 1(1) | 0 |
メキシコ | 千m3(拠点数) | 9(1) | 0 | 0 | 0 | 0 | |
合計※2 | 千m3(拠点数) | 103(4) | 2,097(6) | 17(3) | 8,891(6) | 52(2) |
福山工場では、色素の生産工程で排出される廃水を工場内で処理し、その処理水を瀬戸内海に放流しています。福山工場では2000年からインクジェットプリンター用色素を生産しており、生産に伴って排出される廃水の処理法の改善に力を入れ、生産銘柄に合わせた個別の処理の実施や、低環境負荷のための生産工程の変更を数多く検討してきました。
これらの活動の成果が実り、工業用水契約水量を24,000m3/日から、2015年には23,000m3/日、2018年度には22,000m3/日へと段階的に削減してきました。現在、さらに廃水の処理法に磨きをかけることで、生産量が増加する中でも工業用水契約量を変更することなく生産しています。また、工業用水だけでなく、上水道も生産工程や設備洗浄工程で使用していますが、こちらの削減にも取り組んでいます。
カヤク セイフティシステムズ ヨーロッパ(以下、KSE)は、環境保護を推進するための設備投資活動の一環として、雨水を効果的に利用するための貯水タンクシステムを2017年より導入し、750.5 m3相当のタンクを設置しています。雨水や、製造工室内の湿度管理のための空調から出る水を、飲用以外の用途に用いることで、水資源の利用の効率化だけでなく費用の削減にもつなげています。
気候変動の影響でチェコでは降水量の減少が大きな問題となっている現在、水の再生利用はとても重要です。2020年度以降の年間貯水量はKSEのすべての従業員とその家族(約4,000人)が年間で使用する飲料水量を上回っています。KSEではこのプロジェクトを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
指標 | 対象範囲 | 単位 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
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貯水量(計画) | KSE | m3 | 4,877 | 5,040 | 5,040 | 5,040 | 5,040 |
貯水量(実績) | KSE | m3 | 6,177 | 7,234 | 6,802 | 7,786 | 7,043 |
効果額 | KSE | 万円 | 361 | 411 | 335 | 428 | 477 |
カヤク セイフティシステムズ デ メキシコ(以下、KSM)は、環境保全へのコミットメントの一環として、工場地域での利用可能な水量の問題を解決すべく、水資源利用の改善活動を開始しました。KSMでは、水は主にラボの設備や容器の洗浄や製造工程で使用されます。
改善活動としては、工程や水処理の基準改善の他、従業員の水資源への意識付けを目的とした教育を行いました。2024年度は1年間の活動を経て44%(6,870リットル)水資源の利用を減らすことができました。
指標 | 対象範囲 | 単位 | 2022 | 2023 | 2024 |
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水使用量 | KSM | m3 | 15,762 | 12,792 | 8,892 |
水使用量の削減量※ | KSM | m3 | - | 2,970 | 6,870 |
水使用量の削減率※ | KSM | % | - | 19% | 44% |
効果額 | KSM | 万円 | - | 63 | 146 |
日本化薬グループは、企業の気候変動リスクに関する情報公開プログラム CDP に 2020年から回答しています。2024 年に実施された CDP の質問書に対する回答の結果、気候変動レポートにおいて A スコア、水セキュリティレポートにおいて A- スコアを得ています。