新規ROS1 阻害剤 TaletrectinibのROS1 融合遺伝子陽性の進行性非小細胞肺癌を対象とした2つの第II相試験の部分集団解析の発表(ASCO 2025)について

2025年06月02日

 日本化薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:涌元厚宏、以下「日本化薬」)は、Nuvation Bio Inc.(本社:米国ニューヨーク、CEO:David Hung, M.D.以下 「ニュベーション社」)より導入しましたTaletrectinib(開発コード:AB-106、以下、「本剤」)について、ROS1 融合遺伝子陽性の進行または転移性の非小細胞肺癌(以下「NSCLC」)を対象とした2つの第II相臨床試験(TRUST-I試験、TRUST-II試験)の部分集団解析の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)において発表されたことをお知らせいたします。

 世界各地域における、製造販売承認申請を目的として、TRUST-I試験、及びTRUST-II試験が行われ、これらの試験の主要な結果がポジティブであったことが学会や論文で報告されております。今回、本剤の安全性や有効性のプロファイルが、人種や地域などの特性によらず一貫していることを確かめるために、事前に計画された部分集団解析が行われ、その結果が2025年5月31日(米国東部時間)にASCO 2025にて発表されました。

 発表された内容の詳細はニュベーション社のホームページをご参照ください。
https://nuvationbio.com/wp-content/uploads/2025/05/ASCO-Taletrectinib-TRUST-I-and-TRUST-II-Poster.pdf

 2つの試験の主要なコホート(ROS1 阻害剤未治療コホート、ROS1 阻害剤既治療コホート)の間で、適格基準や試験デザイン、評価項目が類似していることから、2つの試験のデータを併合し、下記の観点でWald法による相対リスクと関連する95%信頼区間を用いて安全性、及び有効性データが比較されました。

・ TRUST-I試験とTRUST-II試験の併合集団を対象とした地域間(欧米及びアジア地域)と人種サブグループの比較
・ TRUST-I試験とTRUST-II試験間の比較
・ TRUST-II試験を対象とした欧米及びアジア地域とその他のサブグループの比較

 部分集団解析の結果、主要な安全性、有効性プロファイルは2つの試験間で一貫しており、併合集団においても人種、及び地域間で一貫性が認められました。TRUST-II試験を対象とした比較においても主要な有効性データである客観的奏効割合は、地域、化学療法歴、人種によらず良好であり、主要な安全性プロファイルは、アジア人患者と欧米人患者の間、人種間で同様でした。

 日本化薬はROS1 融合遺伝子陽性の進行性NSCLCを有する患者様に新たな治療の選択肢を提供できるよう、引き続き、製造販売承認の取得に向けて取り組んで参ります。

以上


参考
ニュベーション社の概要

(1) 名称:Nuvation Bio Inc.
(2) 本社所在地:1500 Broadway, Suite 1401, New York, NY 10036
(3) 代表者:David Hung, M.D.
(4) 創業年:2018年
(5) 決算期:12月31日
(6) 事業内容:Biotechnology
(7) 従業員数:273名(2025年3月31日)
(8) 日本化薬との関係:資本関係・人的関係・取引関係・関連当事者への該当状況は、いずれも該当なし

ニュベーション社について
 同社はグローバルなバイオ医薬品企業であり、差別化された新規の製品候補を開発することによって、癌領域において非常に重要なアンメットニーズの解決に挑戦しています。
 同社の開発候補品のポートフォリオにはTaletrectinib(ROS1阻害剤)、Safusidenib(変異型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(mIDH1)阻害剤)、NUV-1511(薬物・薬物複合体)、NUV-868(ブロモドメインおよびエクストラターミナルドメイン(BET)のブロモドメイン2(BD2)阻害剤)が含まれています。同社はバイオ医薬品業界で豊富な経験を有するDavid Hung, M.D.によって2018年に設立されました。同氏は世界的に使われている前立腺癌の治療薬を患者さんに届けたMedivation, Inc.の設立者でもありました。現在、同社のオフィスは、ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストン、上海にあります。

ROS1 融合遺伝子について
 ROS1 は細胞増殖に関わるチロシンキナーゼと呼ばれる酵素タンパク質の一つで、ROS1 融合遺伝子はROS1 遺伝子とパートナー遺伝子の一部が融合して形成される融合遺伝子です。ROS1 融合遺伝子は様々な癌で確認されており、ROS1 の働きを抑える事で、がん細胞の増殖を抑えることが出来ます。

ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCについて
 世界全体で毎年100万人以上が、肺癌の中でも最も一般的であると言われているNSCLCと診断されています。NSCLCの患者さんの約2%は、ROS1 融合遺伝子が陽性であると推定されています。新たに転移性のROS1 融合遺伝子陽性NSCLCと診断された患者さんの内、最大35%が脳に転移した腫瘍を有しており、初回治療後に癌が進行する患者さんの割合は最大55%と報告されています1-3ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCの患者さんに対する治療の進歩にもかかわらず、より効果的で忍容可能な治療選択肢が依然として必要とされています。

1. Journal of Clinical Oncology. 2012 Mar 10; 30 (8):863-70.
2. Journal of Thoracic Oncology. 2018 Jul 5; 13 (11):1717–1726
3. Lung Cancer. 2019 Apr: 130:201-207.

Taletrectinibについて
 次世代の経口ROS1阻害剤である本剤は、ROS1 融合遺伝子陽性の進行性NSCLCの治療のためにデザインされており、選択的に強力なROS1 チロシンキナーゼ阻害活性を有し、中枢神経系にも移行する特徴を有しています。本剤はROS1 融合遺伝子陽性の進行性NSCLC を対象に、2つの単群デザインの第II相臨床試験で評価されています(TRUST-I 試験(NCT04395677)、TRUST-II 試験(NCT04919811))。

 中国で実施されたTRUST-I試験の結果は米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)にて発表されました。全体の1/4の患者さんが日本から登録されたTRUST-II試験では、その良好な結果がWCLC 2024で発表されました。TRUST-I試験とTRUST-II試験の統合解析の結果は欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で発表され、Journal of Clinical Oncologyにおいて論文が公開されています(Journal of Clinical Oncology. 2025 Apr 3:JCO2500275. doi: 10.1200/JCO-25-00275)。

 米国食品医薬局(FDA)はTRUST-I試験とTRUST-II試験の統合解析の結果に基づいて、本剤の治療ラインを問わない、ROS1 融合遺伝子陽性の進行性NSCLCを対象とした新薬承認申請(New Drug Application)に対して迅速審査にて対応すること、処方薬ユーザーフィー法(Prescription Drug User Fee Act;PDUFA)に基づく審査の期限を2025年6月23日に設定しました。なお、FDAは、本剤について、過去のROS1 阻害剤の投与の有無を問わない局所進行又は転移性のROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCを対象に画期的治療薬に指定(Breakthrough therapy designation)しており、ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCおよび他のNSCLCを対象として、希少疾病用医薬品にも指定(Orphan Drug Designation)しております。
 2025年1月には、中華人民共和国国家食品薬品監督管理局(NMPA)は、本剤について、局所進行又は転移性のROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCを有する成人を適応として、承認しました。
 本邦では、製造販売承認申請を行ったことを2025年3月3日にお知らせしております。

 これまでの学会発表のデータの詳細につきましては、ニュベーション社のホームページをご参照ください。
https://www.nuvationbio.com/publications/



[本件に対するお問い合せ先]
日本化薬株式会社 コーポレート・コミュニケーション部
TEL:03-6731-5237

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