新規ROS1阻害剤 TaletrectinibのROS1 融合遺伝子陽性の進行性非小細胞肺癌を対象としたグローバル第II相臨床試験結果の発表について

2024年11月01日

 日本化薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:涌元厚宏、以下「当社」)は、Nuvation Bio Inc.(本社:米国ニューヨーク、CEO:David Hung, M.D.、以下 「ニュベーション社」)より導入しましたTaletrectinib(開発コード:AB-106/DS-6051b、以下、「本剤」)について、ROS1 融合遺伝子陽性の進行または転移性の非小細胞肺癌(以下「NSCLC」)を対象としたグローバル第II相臨床試験(TRUST-II試験、NCT04919811)の結果が、第65回日本肺癌学会学術集会(JLCS 2024)において発表されたことをお知らせします。
 当社はROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCを有する患者さんへ本剤を速やかに提供できるよう、TRUST-II試験の結果に基づいて、国内の製造販売承認申請に向けた準備を進めてまいります。

 TRUST-II試験は全体の1/4の患者さんが日本から登録され、ROS1阻害剤による治療歴が無い患者さんと治療歴を有する患者さんの両集団において、その良好な結果が本年9月の世界肺癌学会(WCLC 2024)で発表されております。今回のJLCS 2024の発表では、日本人集団のデータが初めて報告されました。
 TRUST-II試験に参加したROS1 融合遺伝子陽性の局所進行または転移性のNSCLCを有する患者さんは、ROS1阻害剤による治療歴の有無などによって、複数設定されたコホートのいずれかに登録されました。
 独立中央画像判定によって評価された客観的奏効割合*(95%信頼区間)は、日本人集団において、ROS1阻害剤による治療歴が無いコホートでは85.7%(57.19 – 98.22)、ROS1阻害剤による治療歴(1剤)があったコホートでは70.0%(34.75 – 93.33)でした(表参照)。
 安全性については、全体集団の159名と日本人集団の38名の間で、試験中の治療下で発現した主な有害事象の割合は類似していました。また、治療に関連した有害事象によって死亡した患者さんは、いずれの集団にも認められませんでした。
 この結果は全体集団で確認された、本剤の良好な有効性および安全性プロファイルが日本人集団においても確認されたことを示すものでした。

*客観的奏効割合: mRECIST v1.1基準に基づいて、独立中央画像判定によって評価された奏効割合。

表:ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCの有効性評価可能例における腫瘍縮小効果

全集団

日本人集団

ROS1阻害剤
治療歴無し
N=54
ROS1阻害剤
治療歴あり
N=47
ROS1阻害剤
治療歴無し
N=14/54(26%)
ROS1阻害剤
治療歴あり
N=10/47(21%)
客観的奏効割合(%)85.2
(72.88 -93.38)
61.7
(46.38 – 75.49)
85.7
(57.19 – 98.22)
70.0
(34.75 – 93.33)
測定可能な脳病変を
有する例数(%)
9 (17)16 (34)4 (29)3 (30)
頭蓋内奏効割合(%)66.7
(29.93 – 92.51)
56.3
(29.88 – 80.25)
75.0
(19.41 – 99.37)
100.0
(29.24 – 100.0)
括弧内は特記が無ければ、95%信頼区間。データカットオフ時期は2024年6月7日。
客観的奏効割合:mRECIST v1.1基準に基づいて、独立中央画像判定によって評価された奏効割合。

参考

ニュベーション社の概要
(1) 名称:Nuvation Bio, Inc.
(2) 本社所在地:1500 Broadway, Suite 1401, New York, NY 10036
(3) 代表者:David Hung, M.D.
(4) 創業年:2018年
(5) 決算期:12月31日
(6) 事業内容:Biotechnology
(7) 従業員数:167名(2024年6月30日)
(8) 当社との関係:資本関係・人的関係・取引関係・関連当事者への該当状況は、いずれも該当なし

ニュベーション社について
 同社は後期臨床段階にあるパイプラインを有するグローバルなバイオ医薬品企業であり、差別化された新規の製品候補を開発することによって、癌領域において非常に重要なアンメットニーズの解決に挑戦しています。
 同社の開発候補品のポートフォリオにはTaletrectinib(ROS1阻害剤)、Safusidenib(変異型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(mIDH1)阻害剤)、NUV-1511(薬物・薬物複合体)、NUV-868(ブロモドメインおよびエクストラターミナルドメイン(BET)のブロモドメイン2(BD2)阻害剤)が含まれています。同社はバイオ医薬品業界で豊富な経験を有するDavid Hung, M.D.によって2018年に設立されました。同氏は世界的に使われている前立腺癌の治療薬を患者さんに届けたMedivation, Inc.の設立者でもありました。現在、同社のオフィスは、ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストン、上海にあります。

ROS1 融合遺伝子について
 ROS1は細胞増殖に関わるチロシンキナーゼと呼ばれる酵素タンパク質の一つで、ROS1 融合遺伝子は ROS1タンパク質とパートナー遺伝子の一部が融合して形成される融合遺伝子です。ROS1 融合遺伝子は様々な癌で確認されており、ROS1の働きを抑える事で、がん細胞の増殖を抑えることが出来ます。

ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCについて
 世界全体で毎年100万人以上が、肺癌の中でも最も一般的であると言われているNSCLCと診断されています。NSCLCの患者さんの約2%は、ROS1 融合遺伝子が陽性であると推定されています。新たに転移性のROS1 融合遺伝子陽性NSCLCと診断された患者さんの内、最大35%が脳に転移した腫瘍を有しており、初回治療後に癌が進行する患者さんの割合は最大55%です。ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCの患者さんに対する治療の進歩にもかかわらず、より効果的で忍容可能な治療選択肢が依然として必要とされています。

Taletrectinibについて
 次世代の経口ROS1阻害剤である本剤は、進行性ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCの治療のためにデザインされており、選択的に強力なROS1阻害活性を有し、中枢神経系にも移行する特徴を有しています。本剤は進行性ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLC を対象に2つの単群デザインの第II相臨床試験(グローバル第 II 相臨床試験(TRUST-II 試験、NCT04919811)と中国で実施されている第 II 相臨床試験(TRUST-I 試験、NCT04395677))で評価されています。

 本剤は、米国食品医薬局(FDA)より、ROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCおよび他のNSCLCの適応を対象に希少疾病用医薬品に指定(Orphan Drug Designation)されており、また、米国FDAおよび中華人民共和国国家食品薬品監督管理局(NMPA)からは局所進行又は転移性のROS1 融合遺伝子陽性のNSCLCを対象として、画期的治療薬の指定(Breakthrough therapy designation)を受けています。

 TRUST-II試験では全体の1/4の患者さんが日本から登録され、ROS1阻害剤による治療歴が無い患者さんと治療歴を有する患者さんの両集団において、その良好な結果がWCLC 2024で発表されております。TRUST-I試験の結果は米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)にて発表されました。米国での承認申請を支持する根拠のデータとなる、TRUST-I試験とTRUST-II試験の統合解析の結果は本年9月欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で発表されました。

 これまでの学会発表のデータの詳細につきましては、ニュベーション社のホームページをご参照ください。


[本件に対するお問い合せ先]
日本化薬株式会社 コーポレート・コミュニケーション部
TEL:03-6731-5237

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