日本化薬の各事業場では、ユーティリティー設備の運用改善や高効率設備への置き換え、照明のLEDへの変更などの省エネルギー対策に取り組んできました。エネルギー起源CO2排出量は以下のように推移しており、年々減少傾向にあります。
日本化薬では、生産の効率化と環境負荷の低減を両立させるため、環境経営の取り組みを重要課題とし諸項目に対する目標を掲げ、その達成に努めています。
温室効果ガスを含む排ガス、エネルギーの効率的利用、排水および廃棄物の環境に排出される環境負荷物質の発生量低減を目指し、設備や処理プロセスの改善などに取り組んでいます。
GRI開示項目に従い、2019年より一部開示項目を増やしています。
環境保全活動の推進
日本化薬ではこれまで2020年度中期環境目標を一つの区切りとして、具体的な数値目標を掲げて環境保全活動を実施してきましたが、さらにその先2030年度までの中期環境目標について、気候変動関係を中心に策定しました。なお今後も目標達成のため、省エネルギー・地球温暖化対策、廃水処理技術の開発と推進、自然災害への対応強化などの活動を実施していきます。
2020年度までの中期環境目標に対する結果
日本化薬では2011年度から2020年度までの中期環境目標を3分野6項目で策定し、全社で環境目標達成に向けて環境保全活動を進めてまいりました。
2020年度はこれまでの中期環境目標の最終年度となります。なお中期環境目標の報告対象は上越工場を除いた日本化薬単体となります。
中期環境目標達成に向けて各事業場で取り組んだ結果、2020年度までの中期環境目標3分野6項目すべてにおいて目標を達成しました。

- ※1 エネルギー起源CO2排出量:2005年度(82.6千トン)を基準として3.8%削減が政府方針
- ※2 VOC:Volatile Organic Compounds(揮発性有機化学物質、集計には政令で報告対象となっている化学物質以外に反応で副生する化学物質等、大気中に放出されるすべての化学物質を含めて管理)
- ※3 COD:Chemical Oxygen Demand(化学的酸素要求量、水中の物質を酸化するために必要とする酸素量で、代表的な水質の指標の一つ)
- ※4 ゼロエミッション率:日本化薬では廃棄物発生量全体に対する内部および外部埋立量の割合として定義
エネルギー・マテリアル・バランス

環境負荷低減の取り組み結果
日本化薬は、環境負荷低減の取り組みとして、地球温暖化防止、大気汚染防止や水質汚濁防止、廃棄物の削減、騒音・悪臭防止に注力しています。
地球温暖化防止

- ※ 2020年度より上越工場分も含む
■日本化薬グループでは、2011年度より各グループ会社の省エネルギー活動を調査し、集計しています。
気候変動対応について
2015年開催のCOP21※において採択された「パリ協定」では、産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2℃未満」に抑え、また「1.5℃未満」を目指す努力をすることを目的として、各国が国家レベルでのCO2排出削減目標を約束しています。日本化薬グループでは2020年度中期環境目標においてエネルギー起源CO2排出量削減の目標範囲を単体としていましたが、新たに設定した2030年度までの中期環境目標では、事業活動で排出する温室効果ガスの削減を日本化薬グループ全体まで拡大し、当社グループの事業活動で排出する2030年度の温室効果ガス排出(Scope1+2)を2019年度比で32.5%削減する目標のもとで、気候変動対策を進めてまいります。
- ※ COP21:第21回気候変動枠組条約締約国会議。フランスのパリ近郊で開催され、2020年で失効する京都議定書以降の新たな枠組みにおいて、全196カ国が参加するパリ協定が採択された
サプライチェーン全体でのCO2排出量データ(スコープ3)の開示
近年、企業が間接的に排出するサプライチェーン全体でのCO2排出量を把握して管理し、対外的に開示する動きが強くなってきています。日本化薬ではこれまで集計して管理していたスコープ1およびスコープ2だけでなく、サプライチェーンにおけるCO2排出量:スコープ3の算定を進めています。
なお2017年度より日本化薬単体でのスコープ3の算定を進めてきましたが、2019年度より国内および海外グループ会社まで集計の範囲を広げてスコープ3の算定を始めました。日本化薬グループでは、これからも引き続き環境省発行の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づき、データの集計および管理を進めることで、サプライチェーン全体のCO2排出量削減への取り組みを計画的に進めていく予定です。
【スコープ1】 事業者自ら所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出(燃料の使用、製造プロセスからの排出など)
【スコープ2】 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出(購入した電力の使用など)
【スコープ3】 スコープ2以外の間接排出(原材料の調達、従業員の通勤、出張、廃棄物の処理委託、製品の使用、廃棄など)
カテゴリ | 排出量(千トン - CO2/年) | ||
---|---|---|---|
2019年度 | 2020年度 | ||
1 | 購入した製品・サービス | 84.9 | 79.5 |
2 | 資本財 | 42.7 | 44.6 |
3 | スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 22.6 | 21.1 |
4 | 輸送、配送(上流) | 19.2 | 17.7 |
5 | 事業から出る廃棄物 | 26.5 | 28.8 |
6 | 出張 | 0.8 | 0.8 |
7 | 雇用者の通勤 | 2.5 | 2.4 |
8 | リース資産(上流) | Scope1,2に含むため算定せず | |
9 | 輸送、配送(下流) | 1.0 | 1.0 |
10/11 | 販売した製品の加工/使用 | - | - |
12 | 販売した製品の廃棄 | 15.4 | 23.2 |
13 | リース資産(下流) | 0.4 | 0.4 |
14/15 | フランチャイズ/投資 | - | - |
スコープ3合計 | 218.0 | 219.6 | |
スコープ1 | 38.0 | 35.2 | |
スコープ2 | 93.5 | 84.4 | |
スコープ1+2+3合計 | 349.5 | 339.2 |
- 算定方法:
CO2排出量は、原則として、環境省、経済産業省による「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」および国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門IDEA ラボに記載の排出係数を用いて計算
MFCA(マテリアルフローコスト会計)導入の推進
日本化薬ではこれまでも環境負荷低減の取り組みにより製造工程中の省エネルギー化や省資源化を進めてきましたが、この環境負荷低減の取り組みを「環境経営」の機会と捉え、MFCA(マテリアルフローコスト会計:Material Flow Cost Accounting)の導入を推進しています。MFCAを導入して生産工程中のエネルギーロスとマテリアルロスを抽出し、さらにこれらを明確にすることによって、生産活動によるCO2排出量削減など、継続的に環境負荷低減を図ることが可能となります。
日本化薬では、2018年下期より福山工場において対象製品を定め、MFCA導入を進めることによって、一定の成果を収めています。また2019年度は東京工場と厚狭工場においてもMFCA導入を進め、さらに2020年度は鹿島工場においてもMFCA導入を展開しました。今後もMFCA導入をさらに他工場に展開することで、より一層の省エネルギーと省資源化を推進していきます。
新中期環境目標を設定
日本化薬ではこれまで中期環境目標として具体的な数値目標を掲げ、環境保全活動に取り組んできましたが、その中期環境目標は2020年度で最後となりました。そこで新たに、事業活動で排出する温室効果ガスの削減を日本化薬グループ全体まで拡大して推進することを目的として、2030年度までの新中期環境目標を策定しました。
日本化薬では、CSR重要課題(マテリアリティ)の最重要課題の一つとして「エネルギー消費量と温室効果ガス」を掲げています。この課題達成のための中期CSRアクションプランを「省エネルギー・地球温暖化対策活動を推進し、2020年度環境目標を達成するとともに、2030年度の環境目標を策定する」としています。今後「国際合意されたパリ協定の目標に貢献できるものであること」、「当社の気候変動リスクを特定し、対策を打つことで事業継続性の強化を図ること」を目指し、2030年度環境目標として、当社グループの事業活動で排出する2030年度の温室効果ガス排出(Scope1+2)を2019年度比で32.5%削減することとしました。
またこれまで目標に掲げておりましたCOD排出量、廃棄物発生量、リサイクル率およびゼロエミッション率は引き続き日本化薬単体で2020年度までの中期環境目標の目標を維持するものとします。なおVOC排出量につきましては、今後は中期環境目標を設定して取り組まなくても十分に管理できるという判断で、新たに目標を設定しないことにしました。
分野 | 項目 | 範囲 | 目標 | 達成年度 |
---|---|---|---|---|
地球温暖化防止 | 温室効果ガス排出量(Scope 1+2) | グループ | 88,790t以下(2019年度比32.5%以上削減) | 2030年度 |
化学物質排出量削減 | COD排出量 | 単体 | 150トン以下(2020年度目標の維持) | - |
廃棄物削減 | 廃棄物発生量 | 単体 | 23,500トン以下(2020年度目標の維持) | - |
リサイクル率 | 単体 | 80%以上(2020年度目標の維持) | - | |
ゼロエミッション率 | 単体 | 3%以下(2020年度目標の維持) | - |
その他の取り組みはクリックでご覧いただけます

姫路工場太陽光発電システムが稼働
姫路工場を取り巻く電力事情は東日本大震災前と大きく変化し、以下のようになっています。
- 関西電力管内においては原子力発電所の再稼働問題で夏季の電力供給不足が毎年予測され、ピークカットの要求が発生している。
- BCP対応として災害発生時に顧客、関係各所と連絡が取れるよう最低限の電力確保が必要と判断した。
以下の3つの条件を満たすため、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池とを組み合わせたシステムを導入し、2014年4月から稼働を開始しています。
- 平常時ピークカットができるシステムであること。
- 外部からのライフラインが切断された状態でも発電できるシステムであること。
- 災害等で停電となった場合、間接・営業部門が最低限活動できるシステムであること。
各設備の能力は以下の通りとなります。
- 太陽光発電 発電能力54kW
- リチウムイオン蓄電池 出力30kVA
稼働後、夏最大で50kWのピークカットができています。また、2014年12月に外部での波及事故により姫路工場は緊急停電となりましたが、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池のシステムは正常に稼働し、間接・営業部門の業務をバックアップする事ができました。将来的には太陽光パネルを増設し、さらなるBCPと省エネ活動に取り組みます。
Kayaku Safety Systems de Mexico, S.A. de C.V.(KSM)
環境負荷低減活動
KSMは、温室効果ガス排出の削減を目的としたエネルギー消費減少など、いくつかの環境改善課題をテーマとして取り組んでいます。
2016年度に場内の西側にある外部照明設備の交換をしました。これまでは、外灯に400ワットのランプを使用していましたが、10本の外灯を32ワットに、残り12本を57ワットの太陽光ランプに交換し、すべての外灯が太陽光ランプになりました。
これは、年間32,000kWの削減効果となり、太陽光パネルの寿命は10年間です。環境負荷の改善に換算すると、CO2の削減としては15トン減、すなわち16トンの石炭を消費しないことになります。KSMは、2018年までに、メキシコの連邦電気会社からの購入量を5%減らし、2018年以降は毎年1%ずつで2023年までに10%削減を目標にしています。

無錫先進化薬化工有限公司(WAC)
照明のLED化
中国無錫市に1996年に設立されたWACは、繊維用及び紙用の合成染料を製造している日本化薬グループの会社です。WACでは、2016年度より徐々に場内の蛍光灯をLEDランプに変更して、これまで、362本の蛍光灯をLEDランプに交換しました。
蛍光灯消費電力1本36ワットから、LED灯消費電力15ワット250本と20ワット112本に交換しました。これらを8時間点灯するとしてシミュレーションすると、年間削減電力量は、約2万キロワットです。標準石炭使用量に換算すると石炭約6.6t分に相当し、年間約17tの二酸化炭素を削減できることになります。今後も引き続き電気使用量の削減に取り組み、地球環境の維持改善に貢献します。

環境に配慮した営業車導入
医薬品を患者様へ適正に使用していただくためには、有効性や安全性に関する情報は欠かせません。当社は、医療機関を訪問し自社医薬品に関する情報を収集・提供するため、MRを全国各地に配置しています。このMRが日頃の医療機関を訪問するために使用している営業車を、寒冷地域へ対応する4輪駆動車をのぞき、すべて環境へ配慮したハイブリッド車へと切り替えを行いました。
大気汚染防止
大気汚染防止については、大気汚染防止法対象の物質や有害大気汚染物質、その他の大気汚染物質に分け特に注意して管理しています。
(一社)日本化学工業協会を中心に有害大気汚染物質の自主管理対象12物質※1を定め、排出量削減の取り組みを行っています。12物質中、日本化薬が1995年度以降に使用しているのは5物質で、ベンゼンについてはすでに1995年に製造工程での使用を中止しています。またクロロホルム、エチレンオキサイドは、2007年度以降はすべて排出量ゼロとなっています。なおジクロロメタンは、2007年度から排出量ゼロの時期もありましたが、2010年度以降は、生産品目に関わる使用があり、そのため若干量の排出が続いています。ホルムアルデヒドも生産品目に関わる使用があるため、若干量の排出が続いています。今後も工程改良等を進めることで、ジクロロメタンとホルムアルデヒドにつきましては、使用量削減を主な対策として、排出量削減に向けた取り組みを続けてまいります。
その他大気汚染物質としてSOx(硫黄酸化物)※2、NOx(窒素酸化物)※3等はボイラーの稼動時に排出されます。日本化薬では、これまでにボイラーの燃料をC重油から硫黄分含有量の少ないA重油、さらには硫黄分のないLPG、天然ガスに順次転換しており、SOxの排出量は、2008年度より減少しています。今後も引き続き、大気汚染防止設備の適切な維持管理、定期点検および保全を実施し、大気汚染物質排出量抑制に努めてまいります。


- ※1 自主管理対象12物質:アクリロニトリル、アセトアルデヒド、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、ベンゼン、ホルムアルデヒド、エチレンオキサイドが該当
- ※2 SOx(硫黄酸化物):硫黄分が含まれる化石燃料等を燃焼させることにより発生、硫黄酸化物は空気中の水分と反応し硫酸や亜硫酸を生じるため大気汚染や酸性雨の原因となる
- ※3 NOx(窒素酸化物):物質が燃焼する際に空気中の窒素と反応して生じる場合と石炭等の窒素化合物を含む燃料や物質が燃焼した場合に発生する場合がある、光化学スモッグ等の大気汚染、酸性雨の原因だけでなく人体の呼吸器等に悪影響がある
- ※4 ばい塵:化石燃料の燃焼等に伴い発生するばい煙のうちの固体粒子(すす)、大気汚染の原因となるほか高濃度のばい塵を吸入した場合は人体に塵肺等、悪影響がある
福山工場VOC削減の取り組み
福山工場で製造している製品の中には、VOCの原因物質となりうる有機溶剤を利用しているものもあります。
製造の最終段階で除去する工程が必要になるのですが、この工程で有機溶剤が少なからず大気中に放出されています。それを回収して再利用できないか検討した結果、設備を改修して工程改善をしたことで、有機溶剤使用量の削減ならびに大気中に放出されるVOC量を30%以上削減することに成功しました。

水リスクへの対応
2015年9月に国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)が採択されました。これは2030年に向けた17の目標と169のターゲットで構成されています。17の目標のうち、目標6(水とトイレ)、目標12(持続可能な生産・消費)、目標13(気候変動)、目標14(海洋保全)、目標15(生態系・森林)は、「水リスク※」に関係するものです。日本化薬グループでは、2018年度の特集記事に掲載したような「廃水」への配慮だけでなく、使用水量の削減などに取り組んでいます。
- ※ 水リスク:大きく分けて次の3つのことを指しています
① 物理的リスク:渇水、洪水、水質汚染による操業などへの影響
② 規制リスク:水質基準強化や上下水道料金の改定など
③ 評判リスク:水アクセス権対応等による企業イメージの低下など
水質汚濁防止
日本化薬では、法令や都道府県、市町村条例で定められた規制値よりもさらに厳しく自主管理基準値を設定し、基準値を満たしているものを排水しています。また、日本化薬では、染料、インクジェット用インク等の色材関連製品を扱っています。これら色材関連製品を製造している福山工場および東京工場では、製造工程で発生する着色廃水を脱色処理もして排出しています。
COD排出量が大きい工場では活性汚泥処理設備を設置してCOD排出量低減に努めた結果、全社で122.6トンの排出量となり、2020年度までの中期環境目標をクリアしました。今後も日本化薬グループでは廃水の管理を徹底し、環境保全に尽力していきます。
大気にも水質にも影響するPRTR※1の取り組み
日本化薬では1995年から、(一社)日本化学工業協会主導の「PRTR法対象化合物削減活動」に参加し、PRTR法対象化合物の排出量削減対策を進めてきました。2020年度のPRTR法対象化合物の排出量は25.8トンで、前年度の32.2トンより約20%減少しています。また、日本化薬で取扱量が多いゆえに排出量も多い状況が続いていたトルエンですが、2015年度の15.5トンから2019年度は5.3トンまで減少しており、さらに2020年度は3.5トンまで減少しています。


- ※1 PRTR:Pollutant Release and Transfer Register(環境汚染物質排出移動登録、PRTR法は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保安上発生する問題を未然に防止することが目的)
- ※2 SS:Suspended solids(浮遊物質量、水中に浮遊または懸濁している直径2mm以下の粒子状物質、鉱物による微粒子、動植物プランクトンやその死骸、下水、工場排水等に由来する有機物や金属の沈殿物を含む、浮遊物質が多いと透明度等の外観が悪くなるほか光が透過しないために水中の光合成に影響)
福山工場使用水量削減の取り組み
福山工場の工業用水契約水量は24,000m3/日でしたが、2015年11月にこの契約水量を23,000m3/日に削減しました。
さらに、2018年度より23,000m3/日から22,000m3/日に削減しました。
福山工場では、生産する色素の生産工程から排出される廃水を自前で処理し、その処理水を瀬戸内海に放流しています。2000年初頭からのインクジェットプリンター用色素の生産に伴い、排出される廃水の処理法に力を入れ、生産銘柄に合わせた個別の処理の実施や、低廃水負荷のための生産工程変更を数多く検討してきました。
これらの活動の成果が実り、2015年に上記の工業用水削減が実現しました。現在、さらに廃水処理法に磨きをかけています。また、工業用水だけでなく、上水道も生産工程や設備洗浄工程で使用していますが、こちらの削減にも取り組んでいます。

Kayaku Safety Systems Europe a. s.(KSE)
雨水を活用する施設の導入
KSE ※は、環境保護を推進するための設備投資活動の一環として、雨水を効果的に利用するための貯水タンクシステムを2017年度より導入しています。雨水や、製造工室内の湿度管理のための空調から出る排水を、飲用以外の用途として利用することで、水道水の使用量を減らすだけでなく費用の削減にもなります。
2019年までに650.5m3相当のタンクを導入しました。2020年には貯水量100m3相当のタンクを増設しています。2019年度は計4,433m3の貯水量となり、効果額は約282万円、2020年度は4,877m3の計画に対して6,177m3の貯水量で効果額は約361万円でした。この貯水量(効果額)はKSEのすべての従業員とその家族(約4,000人)が年間で使用する飲料水量に相当します。
気候変動の影響でチェコでは降水量の減少が大きな問題となっている現在、水の再生利用はとても重要です。KSEではこのプロジェクトを通じてKAYAKU spiritの実現に近づけたと考えています。
- ※ KSE:チェコにある自動車安全部品を製造しているグループ会社
廃棄物の削減
2020年度の廃棄物発生量(上越工場を除く)は22,732トンで、前年度より2.0%減少しました。また2020年度の埋立量は323トンで前年度の4割以下まで減少し、ゼロエミッション率も1.4%で前年度より2.2ポイントの減少となりました。その結果、廃棄物発生量だけでなくゼロエミッション率も2020年度までの中期環境目標を達成しました。
なおゼロエミッション率については、2020年度までの中期環境目標スタート時の2011年度は13.1%もありましたが、この10年間で大きく改善するに至りました。特に福山工場と厚狭工場で埋立処理していた廃棄物のリサイクル化を進めることにより、ゼロエミッション率が大きく改善されました。
今後は各工場での生産量をウォッチングしながら、2020年度目標を継続する形で廃棄物削減を進めていきます。

福山工場汚泥処理変更によるゼロエミッション
福山工場の生産活動から発生する廃棄物は多くの種類がありますが、その中でも廃液処理から発生する汚泥はかなりの割合を占めています。
この汚泥は水分を含むことから処分が難しく、以前は適切な管理のもと埋立処分としていましたが、環境負荷低減を目指してこの汚泥をリサイクルできないか検討した結果、廃棄物焼却施設で使用する熱量調整用の燃料(いわゆる減燃料)として活用できるようになりました。そして、廃棄物処理業者もリサイクル燃料を確保できるということになり、お互いに有効活用できるようになりました。
また、廃棄物発生量に対する埋立量の割合であるゼロエミッション率の目標(1%以下)を達成することができただけでなく、廃棄物のリサイクル率向上および処分費低減にもつながりました。

上越工場産業廃棄物削減の取り組み
上越工場では、主力製品である「偏光板」の生産に関わる数多くの工程から、廃プラスチック・廃樹脂・廃液などの産業廃棄物が発生しています。地球環境に与える影響を最小限に抑制するべく、これら廃棄物の削減やリサイクルを継続的に取り組むため、「産業廃棄物削減部会」を組織しています。
「産業廃棄物削減部会」は、上越工場内から選任されたメンバーにて毎月の産廃量を確認するとともに、年度ごとに設定した削減テーマの進捗状況を確認し、産廃削減を推進しています。2016年度より少量多品種の製品を見直し、生産計画の見直しにより纏め生産を通常化することで、廃プラスチック、廃液の削減を実現しました。2018年度からはリサイクル設備を導入・稼働させ大幅な廃液削減が実現し、安定的にリサイクル装置も稼働しています。2020年度は投入するフィルムの長さに応じ、作製樹脂の最適量を標準化し、樹脂の余剰発生を抑制して廃樹脂量を削減しました。
2021年度も新たな削減テーマを掲げ、地球環境保護に貢献すべく、引き続き産業廃棄物の削減、ゼロエミションを目指しながら、持続可能な生産活動、社会貢献を推進し取り組んでいきます。
上越工場 産業廃棄物排出量 2016~2020年度の実績

Kayaku Safety Systems de Mexico, S.A. de C.V.(KSM)
産業廃棄物管理
KSMは、木材、ボール紙、非鉄金属、アルミニウム、プラスチックなどの固形廃棄物を適切に分類し、それらを再利用できる外部の供給業者を見つけるように絶え間なく取り組んでいます。 これらの材料は2〜3ヶ月間所定の場所に保管し、政府が認可した供給業者によって定期的に収集されています。
収集された廃棄物のうちリサイクルできるものは、それぞれのリサイクル業者へ運び、木材は木製パレットを製造し、段ボール類は再生され、さらにプラスチックやアルミニウムおよび鉄は、新しい原料を生み出します。
このプログラムは、リサイクルのためのペットボトルや適切な処理のための有機および無機廃棄物などに分類することができる休憩エリアなどの非生産的な分野にまで及びます。
生物多様性/騒音・悪臭防止
現在、世界中で生物多様性への取り組みが重要な環境課題になっていますが、日本化薬グループにおいても、レスポンシブル・ケア方針で謳っているように生態系への影響を重視しています。生物多様性の損失は環境汚染と森林破壊が大きな要因となっていますが、日本化薬グループは環境汚染に対しては水質汚濁防止に取り組んでいます。森林破壊に対してはFSC認証品への移行を推進しています。
水質汚濁防止
FSC認証品への移行推進
コピー用紙等の事務用紙をFSC※(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)認証品へ切り替えています。なお包材関係についても、一部FSC認証品に置き換えられるところは置き換えを進めています。
- ※ FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)
1993年10月にカナダで創設されたNGOで、国際的な森林管理の認証を行う協議会。生産を行う森林や製品、流通過程の評価、認定、監督を行う。消費者がラベリング(FSC認証マーク)された木材を選択することにより、環境や社会に大きな負荷を掛けずに生産された木材およびそれを使用した製品を選択できる。
また、生産拠点周辺では、日本化薬は工場周辺への騒音・悪臭防止に注意を払いながら事業活動を行っています。工場境界線上の騒音測定等を定期的に実施する他、臭気モニター制度や地区懇談会などで地域住民の方から寄せられるご意見やご要望を最重点課題として地域との共存を図っています。また工場内でも作業環境測定を定期的に行ない、騒音その他の有害物質から従業員を守るべく改善に努めています。
環境会計
日本化薬では環境保全に関するコストを集計し、2000年度より公表しています。また2003年度からは環境保全効果を集計しています。環境保全コストおよび環境保全効果の集計は、環境省発行の「環境会計ガイドライン(2005年版)」と(一社)日本化学工業協会発行の「化学企業のための環境会計ガイドライン」を参考にしています。


- 集計範囲:日本化薬単体
- 設備投資:2019年度(2019年4月〜2020年3月)に発注した金額の集計
- 管理コスト:同期中に発生した費用、環境保全の観点から燃料の変換や廃棄物処理方法の変更等で生じたコスト上昇分は実施から5年間を計上
- 財務会計上の収益は、環境保全活動の結果として、年度において実現した収益を計上
- 費用削減や環境負荷削減等の財務会計上の収益でない効果は、施策の実施から5年間を計上
環境・安全衛生関連投資
日本化薬では環境や安全衛生に関する設備投資を計画的、継続的に行っています。2020年度は、環境関連設備投資額が434百万円となっており、前年度の約2.2倍に増えています。特に前年度と比較して、産業廃棄物処理設備が31百万円から107百万円(約3.4倍)に、省エネ・地球温暖化防止に関わる設備が40百万円から173百万円(約4.3倍)に増加しています。
また、2020年度の安全衛生関連設備投資額は529百万円で、前年度よりも約22%減少しました。内訳では、設備老朽化対策の投資額が全体の55%を占めています。

環境関連データ集
日本化薬(単体) | 国内グループ | 海外グループ | 合計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2020年度 |
地球温暖化 | ||||||||
エネルギー投入量 (原油換算kL) |
34,939 | 38,700 | 4,721 | - | - | - | - | - |
CO2(ton) | 69,241 | 69,903 | 9,693 | 30 | 45,111 | 44,072 | 124,045 | 114,005 |
非エネCO2(ton) | 2,371 | 2,301 | 0 | 0 | 12 | 39 | 2,383 | 2,340 |
その他GHG(ton) | 520 | 194 | 38 | 0 | 206 | 381 | 764 | 575 |
大気排出 | ||||||||
NOx(ton) | 9.1 | 7.5 | 0.0 | 0.0 | 0.9 | 0.7 | 10.0 | 8.2 |
SOx(ton) | 1.3 | 1.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 1.3 | 1.0 |
ばいじん(ton) | 0.9 | 0.5 | 0.0 | 0.0 | 3.3 | 2.0 | 4.2 | 2.5 |
PRTR物質(大気排出) (ton) |
18.9 | 16.8 | - | - | - | - | - | - |
水域排出 | ||||||||
水資源投入量(千m3) | 10,160 | 10,092 | 216 | 5 | 2,506 | 2,518 | 12,882 | 12,615 |
排水量(千m3) | 10,577 | 9,919 | 213 | 5 | 1,513 | 1,389 | 12,303 | 11,313 |
COD(ton) | 145.2 | 122.6 | 0.0 | 0.0 | 62.2 | 67.6 | 207.4 | 190.2 |
窒素(ton) | 72.0 | 83.2 | - | - | - | - | - | - |
りん(ton) | 4.1 | 3.2 | - | - | - | - | - | - |
PRTR物質(水域排出) (ton) |
13.3 | 9.1 | - | - | - | - | - | - |
廃棄物 | ||||||||
廃棄物量(ton) | 23,204 | 25,331 | 3,240 | 43 | 674 | 1,046 | 27,118 | 26,420 |
最終埋立て量(ton) | 844 | 404 | 34 | 2 | 20 | 113 | 898 | 519 |
ゼロエミッション率(%) | 3.6 | 1.6 | 1.0 | 5.4 | 3.0 | 10.8 | 3.3 | 2.0 |
リサイクル率(%) | 84.4 | 81.3 | - | - | - | - | - | - |
- ※12020年度より日本化薬(単体)に上越工場を含む。また国内グループから㈱ポラテクノを除外。
- ※2「-」部分は測定不要または把握できていない項目であるため未集計。