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第三者意見

川村 雅彦 氏 写真

株式会社ニッセイ基礎研究所
上席主任研究員

川村 雅彦 氏
Profile
1976年九州大学大学院工学研究科(修士課程)修了後、三井海洋開発(株)入社、1988年(株)ニッセイ基礎研究所入社。専門分野は環境経営、CSR、SRI、環境ビジネス、BCP。
所属団体は環境経営学会、環境監査研究会、サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク(NSC)など。環境省環境コミュニケーション大賞審査WG委員なども務める。

CSRの報告について

今年度から、冊子(ダイジェスト版)とウェブサイト(詳細版)の併用によるCSR報告となった。訴えたいことをコンパクトに伝えるという意味で、冊子は読みやすくなった。一方で、冊子とウェブの関係性が分かりにくくなったことは否めない。そこで、冊子の目次にウェブ掲載項目の併記をお薦めしたい。これにより読者は詳細情報として何がウェブに書かれているかを理解できて、必要に応じた閲覧が可能となる。

特集として、中国の排水規制への取組が取り上げられたことは、事業のグローバル展開の観点から評価できる。しかし、報告全体としては国内中心であり、もっと海外事業の報告が必要である。環境面ではグループ会社が報告対象となっているが、環境負荷については国内・海外に分けて掲載すべきである。これはいわゆるバウンダリー問題であるが、連結では海外従業員が約1/3を占めることから、社会面においても積極的な取組が求められる。

昨年度はCSR経営のP-D-C-A報告の必要性を指摘した。本報告では「CSRアクションプラン」という形で、活動項目ごとに前年度の目標・結果と次年度の目標が自己評価付きで全覧できるようになったことは高く評価したい。また、BCP(事業継続計画)の記載も求めたが、東日本大震災の被災経験も踏まえて、全社BCP策定プロジェクトの発足が報告された。ただ、ウェブでは具体的な策定状況の掲載があった方がよい。なぜならば、BCPが国際的な取引要件になりつつあるからである。

CSRの内容について

報告内容を全体的にみると、企業ビジョン(あるべき姿)としての「KAYAKU spirit」に対応して、その実現方策として個別領域の体制・仕組みや取組が記載されている。冊子がコンパクトになったせいか、CSR経営として「何かが足りない」という印象がある。その理由は、ビジョンと個別活動を“つなぐもの”の曖昧さであろう。

確かにCSRアクションプランでは「基盤」「社会的責任」「環境責任」「経済的責任」について、それぞれの狙いや目標が記されている。しかし、ISO26000(社会的責任の国際規格)が世界共通のバイブルとなった現在、これを基準に必要かつ十分かどうかの検証が必要である。つまり、CSRの本質である『本業のプロセスとプロダクトを通じた社会的課題の解決』の視点から見直す必要がある。

グローバル化を背景にサプライチェーン・マネジメント(CSR調達)も不可欠である。国が違えば、環境問題も含めて社会的課題は異なり、日本の“常識”は通用しない。これは新たな経営リスクでもあり、事業のグローバル展開を視野に入れると、CSRの基本概念とともに実践領域やステークホルダーの見直しが求められる。なお、従来からのレスポンシブル・ケアとCSRの重複感や整合性の問題にも考慮すべきであろう。的外れかも知れないが、製薬メーカーとして遺伝資源や生物多様性の検証も必要ではないか。

高崎工場の見学の際にも感じたが、貴社の企業風土を一言でいえば、「誠実で伝統重視」であろう。これを活かしつつも、今後のダイナミックなCSR経営の展開に期待したい。